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小児科における主要な疾患の解説

最終更新日:2019年11月28日(木曜日) 16時15分

1)感染症について

 

咽頭(のど)や鼻腔のぬぐい液または便での迅速検査が可能な病気については、保険の適応範囲内(保険で認められた条件を満たす場合)で適切に検査を行なって診断します。症状もないのに流行しているから確認したいとか、園や学校から調べてくるように言われたから、という理由での迅速検査は行ないません。

 

当科で検査可能な迅速検査とその保険上の条件についてお示しします。いずれもその病気が診察上疑われる場合、というのが大前提ですが、

 

  インフルエンザ:発症後48時間以内

 溶連菌:条件なし

 咽頭アデノウイルス:条件なし

 RSウイルス:1才未満

 ヒトメタニューモウイルス:6歳未満で肺炎が強く疑われるとき

 マイコプラズマ:条件なし

 百日咳:条件なし

 便ロタウイルス・腸管アデノウイルス:条件なし

   便ノロウイルス:3才未満

 

例えば3才以上のお子さんでは、保険診療ではノロウイルスの検査はできません

 

 

2)食物アレルギーについて

 

 食物アレルギーについては昔と考え方がすっかり変わりました。昔は正しいと考えられていた以下のことがらも現在では誤りとされています。

 

血液検査(特異的IgE抗体検査)で食物アレルギーの原因が分かる。(→血液検査で分かるのは感作されているかどうかです。感作とは食べ物などのアレルゲンに対するIgE抗体が体の中にあるかどうかであり、特異的IgE抗体が陽性であればそのアレルゲンに対して敏感であるとは言えますが、アレルギー反応を起こすとは言えません)

 ・特異的IgE抗体陽性の食べ物は除去する必要がある。(→除去が必要な食べ物もありますが、特異的IgE抗体が陽性だからと行って除去する必要はありません)

 ・特異的IgE抗体が陰性にならないとその食べ物を食べてはいけない。(→特異的IgE抗体の値で除去継続か除去解除かが判断されるわけではありません)

 ・食物アレルギーにならないように妊娠中は卵等の摂取を控える。(→現在ではこのようなことを頑張って行なっても食物アレルギーの発症は防ぐことができません)

 ・食物アレルギーにならないように授乳中は卵等の摂取を控える。(→同じくこのようなことを行なっても食物アレルギーの発症は防ぐことができません)

 ・離乳食の開始進行を遅らせ、卵等をなるべく遅くまで与えない。(→卵などの摂取を遅らせば遅らせるほど、むしろ逆に卵などのアレルギーの発症のリスクが増加することが明らかになっています。食物アレルギーにならないようにするためには早く摂食を開始することです。ただし通常の離乳食の開始時期より早く始めてはいけません)

 

 現在食物アレルギーは経皮感作経口免疫寛容が発症に深く関係していると言われています。湿疹などの皮膚のバリア機能が低下したところから食べ物のアレルゲンが体内に入って感作され、その食べ物を食べたときにアレルギー反応を起こします。また口から入った食べ物に対しては免疫反応が起こらないようなシステムが働くと言われています。食物アレルギーにならないためには、乳児期の湿疹をなるべく早期に、適切に治療して治すことが大切です。

 

 食物アレルギーはときに生命に危険を及ぼすこともあり、自己判断での対処は止め、病院でしっかりと診察を受けて適切に治療して下さい。

 

 

3)熱性けいれんについて

 熱性けいれんの予防として発熱時に常にダイアップ坐薬を使用している方がおられ、多い方では月に12回ほど使用されます。2015年に熱性けいれんのガイドラインが新しくなり、ダイアップ坐薬は熱性けいれんの予防には有効ではあるが、副作用もあるのでルーチンに使う必要はなく、ダイアップ坐薬を使用する基準が明記されました。以下の基準 1.または2.を満たす場合に使用すると記載されています。つまり昔に比べてそれほど使用しなくてもよいという方向に変わってきています。

 



  1. 遷延性発作(持続時間15分以上)


  2. 以下の6項目のうち2つ以上を満たした熱性けいれんが2回以上反復した場合

    ⅰ 焦点性発作(部分発作)または24時間以内に反復する

    ⅱ 熱性けいれん出現前より存在する神経学的異常、発達障害

    ⅲ 熱性けいれんまたはてんかんの家族歴

    ⅳ 12ヶ月未満

    ⅴ 発熱後1時間未満での発作

    ⅵ 38℃未満での発作



 

4)夜尿症について

 夜尿症(おねしょ)が治らないとの訴えで小児科に来られる小学生低学年児童がおられます。腎臓や膀胱、脊髄神経に異常がないかを確認した上で、夜尿のパターンを検査し、内服薬、アラーム療法などを行なっています。まずは受診して下さい。

 

5)低身長について

 同性・同年齢小児の標準身長の-2.0SD以下の低身長の方には成長ホルモン分泌負荷試験を行なっています。一定の基準を満たし、成長ホルモンの分泌が少ない場合は成長ホルモン治療を受けることができます。なおSD(現在の身長-標準身長)÷標準偏差で計算します。

 

6)肥満症について

 肥満症の子どもが多くなってきています。肥満症は肥満度で評価します。

肥満度=(実測体重-標準体重)÷標準体重 ×100%で求めます。なお標準体重は性別、年齢別、身長別に設定されています。肥満度が20%以上を軽度肥満、30%以上を中等度肥満、50%以上を高度肥満といい、その原因を調べ、生活指導、食事指導などを行い、経過をみていくことになります。