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臨床研究

最終更新日:2020年8月26日(水曜日) 17時24分

 大学病院等の大きな病院で診療される機会の少ないありふれた疾病や高齢者特有の問題については、その解決方法を研究される機会が少なく、高齢化が進む中で日常診療に戸惑うことがあります。そうした問題に対し、当院では2007年度より多職種で構成されたチームが主導で臨床研究を行い、包括的評価と個別化された介入によって少しでも解決できるよう努力し、その成果を発表してきました。また、総合診療専攻医研修に必要な臨床研究の課題について、研究の立ち上げから実施、解析などの技術的な支援、ケースレポートや原著論文の執筆を行い、当院から世界へのエビデンス発信を行っています。



【現在実施中の臨床研究】
①院外心肺停止の予後に関する研究
課題名:院外心肺停止患者のアウトカム調査
倫理委員会承認:第818-1号(2020年3月18日)
主任研究者(分担者):内科・総合診療科 森腰夏子(荒幡昌久)
研究計画書:PDF



【過去に終了した臨床研究と業績】
①終末期医療に関する研究
課題名:終末期カンファレンス検討例の転帰と予後に関する調査
倫理委員会承認:第96号(2018年5月17日)
主任研究者:内科・総合診療科 荒幡昌久
 非がん疾患において、終末期と決定することが人工栄養(胃ろうや中心静脈栄養など)の実施の是非や診療内容(人工呼吸器の使用など、どこまで治療するべきか)の方針決定に強く影響します。しかし、終末期とするための判断基準はガイドラインに存在せず、医療現場ではその判断に苦悩する日々が続いています。当院では、2007年より「終末期カンファレンス」によって厚労省の示したプロセスガイドライン(ガイドラインリンク)に沿って終末期診断をしてきました(写真5)。今回、その診断結果を解析し、どのような状態であれば終末期と診断してよいのかを分析しました。
 今後、第62回日本老年医学会学術集会(2020年8月4~6日)において発表し、さらに論文で公表する予定にしています。




写真5.終末期カンファレンスの様子を伝える新聞特集記事(2012年2月5日付)



②クロストリジウム・ディフィシル腸炎(CD腸炎)に関する研究
課題名:当院入院患者におけるClostridium difficile感染症の実態把握調査
倫理委員会承認:第813号(2016年1月26日)
主任研究者:内科・総合診療科 小川太志
 高齢者の感染症入院患者(誤嚥性肺炎、尿路感染症、胆道感染症など)が多い当院では、CD腸炎を併発して入院期間が延長し、栄養状態や予後が悪くなる事例が比較的多く、以前から対策が求められていました。CD腸炎発症の要因や予後因子に関する研究は、全世界で数多くなされていますが、当院における患者層や環境を考慮すると、過去の研究データは十分ではなく、独自の対策が必要と考えられました。そのため、当院のデータを細かく分析し、発症率の低下や予後の改善を得るための臨床研究を2015年度より開始しました。後期研修医(専攻医)が主導する研究として、当院で家庭医療専門医の後期研修中であった小川太志医師が中心となって研究を行いました。過去の事例の検討から、発症要因のみならず、CD腸炎の発症と死亡率の上昇には強い関連があることが判明し、いくつかの解析結果について、複数の学術集会に報告しました(表2、写真6)。今後、さらに分析を進めて論文報告する予定です。



表2.CD腸炎に関する学会発表




写真6.「医学生研修医の日本内科学会ことはじめ2017東京」で発表する小川医師(2017年4月17日撮影)



③認知症高齢者の摂食嚥下障害に関する研究
倫理委員会承認:認知症高齢者摂食障害例に対するクリニカルパスを用いた包括的介入の効果
倫理委員会承認:第664号(2013年3月21日)
主任研究者:内科・総合診療科 荒幡昌久
日本プライマリ・ケア連合学会より若手研究助成を受けて2013年4月から2015年3月に実施した介入試験です。摂食嚥下障害により、人工的水分・栄養補給法(点滴や経管栄養など)に依存状態となった患者さんの原因を多職種による評価やカンファレンスで全人的に分析し、可能な介入を行うことで、摂食機能予後が改善しました。研究内容が注目され、新聞やケーブルテレビなどいくつかのメディアで取り上げられました(写真7)。
 研究の結果は、中間解析結果として第6回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会(2015年6月、つくば市)において日野原賞候補演題として発表しました(残念ながら受賞ならず)。最終結果は、2017年7月に英文誌BMC Geriatricsに発表しました(BMC Geriatrics)。また、2018年度には論文に対して日本クリニカルパス学会より優秀英語論文賞を授与されました(日本クリニカルパス学会)。ほかにも、多職種が各々の立場から摂食嚥下障害の分析を行い、数多くの学会発表を行っています(表3)。




写真7.摂食嚥下カンファレンスをNHK取材班が撮影する様子(2015年6月17日)



表3. 摂食嚥下機能評価チームの学会発表