9、在宅医療の今後へ、人材確保と育成は
最終更新日:2010年8月9日(月曜日) 12時16分
在宅医療は対象者と家族の「笑顔での生活(QOL)」を支援するものです。病気や障害への対応、生活への支援など医師やケアマネジャーなど医療、福祉専門職が必要です。対象者だけでなく介護家族の支援も重要であり、専門性とともに共感性・協調性など人間性も問われます。在宅医療は個々の専門職とそのチームで支援するため、医師など専門職の確保と育成が重要です。
1、地域における訪問診療(往診)医師の確保と育成
平成19年度より病院での訪問診療対象者数や看取り件数が増加(資料85)していますが、訪問診療を担う医師の確保が課題であり、富山県では在宅支援診療所も非常に少ない状況です(資料86)。可能な限り外来通院をお願いし、訪問診療が必要な場合はまずかかりつけ医に要請し、困難な場合は病院で行っています(資料87、88、89)。若くて志のある医師が参入しない限り、訪問診療のニーズに今後対応することは困難になります。南砺市民病院の在宅医療などの取り組みに賛同され、協力や研修を希望される医師を待っています。(連絡先、南砺市民病院総務課)
2、地域における訪問看護師の確保と育成
看護師の確保はやや難渋していますが、地域看護や在宅・訪問看護を目指す意欲的な看護師が徐々に集まりはじめています。南砺市における在宅医療のあり方を検討し(資料23)、病院での5年以上の研修後2~3年訪問看護ステーションをローテーションする運用を開始しました(資料90)。病棟や外来などで研修、キャリアアップし、在宅で医療処置や看護支援を必要とされている対象者や家族に、看護師個人またはチームとして係ることで重要性ややりがいを実感できます。その経験をまた病院で若い看護師などに伝承することも期待されています。
3、地域における訪問リハビリ療法士の確保と育成
リハビリ療法士の確保は順調で、各療法士が急性期・回復期・維持期(訪問、通所)リハビリテーションを各々3年程度経験することで育成を図っています(資料91、92)。在宅支援の訪問リハビリや通所リハビリともに、これまでの調査などで機能維持向上に寄与しています(資料93、94、95、96)。急性期・回復期・維持期を経験することによって、リハビリ療法士の総合的判断や対応能力が向上するだけでなく、入院時から在宅までの情報伝達が格段に向上しました(資料44、97)。
4、優秀なケアマネジャーの確保と育成
ケアマネジャーは在宅医療の大切なキーマンですが、資格試験の難しさや在宅支援の役割の重要性に比較し社会的評価が十分でない現状があります。南砺市の一部ではケアプラン作成が限界に近く、新規依頼を受託できない状況が見られます(資料98)。在宅医療など在宅支援基盤が整備され、また地域リハビリ研修会などケアマネジャーの育成環境も整っています(資料33、71、99)。各専門職がケアマネジャーに参入することを期待しますが、ケアプラン報酬が低く、看護職などの給与水準確保は困難です(資料100)。今後増加する在宅医療が必要な重度対象者へ、看護職など医療職のケアマネジャーも必要であり、雇用側とともに厚生労働省側の見直しを期待します(資料14)。
5、療養病院や施設利用者の在宅復帰に向け相談員や職員の意識改革を
QA4-4でも示しましたが、療養病院や施設利用の対象者は、在宅医療などの支援による在宅復帰が困難な状況にあると推測されます。しかし、平成24年度までに介護療養病床全廃、医療療養病床の削減があり、受け皿になる老人保健施設はリハビリテーションで生活機能を向上させ在宅復帰を支援する目的があります。対象者の多くが自宅生活を希望されている現実(資料7)を踏まえ、可能な限り在宅復帰への取り組みが必要です。
ある老人保健施設で、入所者よりショートステイ利用者の介護度が重く、重度の対象者も在宅医療支援などで在宅生活が可能なことを職員が知り、在宅復帰への意識が向上したと発表がありました。「高齢障害者の意向に沿い家族の犠牲を伴わない社会復帰」を目標に、相談員や職員が主導的に家族と相談し、ケアマネジャーと協力し在宅支援サービスを十分活用し自宅復帰への道筋を探る努力が必要です(資料29、31)。