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8、認知症診療を含む地域ネットワーク作りは

最終更新日:2010年8月9日(月曜日) 12時16分

当院を中心に南砺市で先進的な在宅医療を展開していますが、多くの課題も抱えています。一つ一つ着実に解決してゆくことが、高齢化、過疎化、核家族化が進行する地域で「幸せに生涯を暮らせる街づくり」の基礎になると考えます(資料21、62)。

1、高齢者、障害者自身の思いを大切にする社会作り
家庭や地域や社会に長く貢献されてきた高齢者、障害者の人生の終わりに近い時期が不幸であってはいけないと思います。人は高齢になり障害を持つほど変化に適応できず、思い出のある空間でなじみの人達と過ごすことが最も幸せで安心できる環境なのです(資料63)。富山県の調査(資料64)や当院の調査でも高齢者や障害が重い方は自宅での生活を希望されます(資料7)。  

世話になることに気兼ねする高齢者が多く見られます。人間は老いて人の世話になり、世を仕舞うのが当たり前なのです。人の世話になることが家族や社会への最後の貢献になる社会作りこそ、今求められている課題であり現役世代の努めです。

 
2、高齢障害者に寄り添わず施設介護に偏った現状認識と反省から
高度成長期にあわせ、障害高齢者を自宅や地域での見守りから施設に収容する方向に移行しました。富山県は全国的にも施設整備率が高く(資料65、66)、在宅医療の訪問看護は最低のレベルです(資料67、68)。原因は地域住民の意識にも関係しますが、平成16年頃まで住民や家族の希望として市町村が国県に施設の整備を強く要請した経緯があります。この機会に障害高齢者が在宅や地域で共に生活してゆく(ノーマライゼーション)ことの意味や重要性を住民と共に専門職や行政も再認識すべきです。

 
3、家族を支援し家族の絆を強くする取り組み
突然対象者が病気を患い障害を持った時、家族は今後の生活への不安感などからしばしばパニックになります。専門職の支援や地域の協力がなければ、介護負担感で家庭が崩壊します。医師から現状と見通し、ケアマネジャーなどから在宅医療サービスなどの説明を受け、回復の見通しや介護負担の理解が得られます(資料69)。自宅での介護が始まれば新たな課題も出ますが、その時こそ、専門職チームの支援と地域の見守りを得て解決してゆくことがとても大切です(資料70)。現代社会で希薄化した家族の絆がこの過程で強くなり、社会との連携も構築されます。

 
4、住民の意識啓発を行い優しく強い地域作りへ
介護家族へ安易に施設入所をすすめたり、結果的に仕事を辞めて家庭介護を強要する言動は慎むべきです。自宅か施設か、どのような介護をするかなどは、本人と家族が決定することで、専門職や地域の住民は「高齢障害者の意向に沿い家族が犠牲にならない」環境整備に努めるべきです(資料10)。

今後も社会福祉協議会や市民団体などと協力し、継続的に市民フォーラム(資料12)や各種研修会(資料71、72、73)などで地域住民への啓発活動を進めてゆく必要があります。介護が必要になってから死亡まで平均3年程度との調査があり、介護負担が重度な対象者ほど短くなります。専門職チームの支援のもと、家族と共に対象者を地域の方々が見守る社会は、結果として家族や住民を優しくも強くもします。


5、地域におけるボランティア活動(インフォーマルサービス)の育成
医療保険や介護保険サービスと家族介護だけでは十分な在宅支援基盤は整備できません。友達の顔や近所の子供の声でどれだけ癒され笑顔になれるでしょうか。社会福祉協議会を中心に進められている地域ケアネットワーク作りは地域のボランティア活動や意識啓発に貢献すると期待し応援をして行きます(資料74)。

 
6、「認知症でもだいじょうぶ」町づくりへの参加(ホームページにリンク)
「認知症の人と家族」はアルツハイマー病や脳卒中などの認知障害で生活に困っておられる人とその家族です(資料75)。治療と合併症や周辺症状への対応が必要であり、時期や程度によって係るべき専門職が多種多彩です(資料76)。認知症支援のネットワーク作りは予防から治療、終末期対応まで長い期間で多くの専門職、家族、住民が係りますが、南砺市では平成19年度までのタイムスケジュール(資料77)を立案し、基本的考え方(資料78)を確立し取り組んでいます。

平成17年度より受診しやすく、在宅支援に結びつく「もの忘れ外来」を開設しました。年間100名前後が受診され、医師、臨床心理士と作業療法士が病気、認知・精神障害や生活障害を評価し適切なアドバイスを行い、ケアマネジャーや主治医へも報告します(資料79)。地域活動として「家族会」への支援(資料80)やコントDE健康での住民への啓発活動(資料81)や市民フォーラム(資料82)を行い、2005年「認知症でもだいじょうぶ」町づくりキャンペーン(資料83、キャンペーン参加へのリンク)に参加しました。その後も認知症キャラバンメイトへの参加や地元中学生への認知症サポーター作り(資料84)を行っています。


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