臨床倫理指針について
臨床倫理指針
- 医療の原則
いかなる人にも、「自律尊重」「与益」「無危害」「公正・正義」「人間の尊厳」の生命倫理諸原則に基づき、患者さんの自己決定権を尊重しながら、医療者と患者さんが良きパートナーシップ(協力体制)を形成して、患者さんの最善の利益を目的とした治療方針を決定します。 - 信頼される医療の提供
関係法規を遵守し、診療ガイドラインを尊重した医療を提供します。 - インフォームド・コンセント(説明と同意)
行おうとする検査や治療については、患者さんの理解力に応じて、適切な方法と内容で十分な情報を提供し,自発的な同意を受けて医療を提供します。その際、患者さんの病名・病態、これから行おうとしている治療(検査)目的、内容、リスク、代替可能な治療(検査)法、何もしない場合に考えられる結果を説明します。また、治療に関しては、要望があれば主治医のプロフェッショナルとしての立場から選択肢に優位順位をつけて説明します。また、説明は一度とは限らず、必要があれば何度も繰り返して行います。 - 患者さんが自律的に判断することができない場合の同意
患者さんが自律的に判断することができない場合は代理人に説明し,同意を得ます。患者さんの家族や後見人も自動的に代理決定者になるわけでなく、患者さんの価値観、人生観を十分に理解し、患者さんの立場に立って判断できる場合にのみ代理人となりうるという原則に従います。 適切な代理人がいない場合は,患者さんの利益が最大となる治療方法を優先し、判断が困難な場合には、臨床倫理コンサルテーションチームで検討して判断します。 - 判断能力がある患者さんの治療拒否
患者さんが自律的に判断できる場合、患者さんの自己決定権を尊重し、患者さんの望まない治療を拒否することを認めますが、治療による患者さんの利益と不利益などを十分に患者さんに説明し、慎重に話し合いを重ねます。 医療者と患者さんの意向が対立する場合には、必要に応じて倫理コンサルテーションチームで検討します。 - 宗教的輸血拒否に関する対応
基本的には、2008年に出された宗教的輸血拒否に関する日本輸血・細胞治療学会など5学会の合同委員会のガイドラインに従います。 患者さんの意思を尊重し可能な限り無輸血治療に努めますが,「輸血以外に救命手段がない」場合,輸血実施を行うとする「相対的無輸血治療」の方針を採用します。 - 身体抑制について
身体抑制は人間としての尊厳を損なう危険性を有しており、法律でも禁止されていることから、下記に示す例外事項を満たさない場合には行いません。身体抑制の必要性があると判断した場合は、患者さんと家族に説明し同意を得たうえで行います。
例外事項
1.切迫性(抑制しなければ生命にかかわる可能性がある)
2.非代替性(他に、代わる手段がない)
3.一時性(必要がなくなれば、速やかに解除する)
- がんの告知について
患者さん本人の知る権利を尊重し、本人への告知を優先します。ただし、告知を望まない患者さんもいらっしゃると思いますので、原則、すべての患者さんに、「がんなどの予後不良な疾患であっても告知を望まれるか」、外来受診時や入院時に希望をお伺いします。本人が告知を希望されない場合には、患者さんから指名された代理人(ご家族など)にお話しします。 - 終末期における意思決定
終末期の判定は、複数の医師で検討し、慎重に判断します。 日本臨床倫理学会から提案された「医療処置(蘇生処置を含む)に関する医師による指示書」に従って患者さんの終末期の意思を確認し、それに基づいて医師の指示書(POLST;ポルスト)を作成します。当院における意思決定のプロセスに関しては、「南砺市民病院の終末期意思決定プロセス指針」に従って行います。 - 臨床研究,治験
院内医療倫理委員会へ申請し,その決定に従います。ただし、治験に関しては契約を締結した院外の倫理委員会にて審査する場合もあります。 なお、臨床研究は、ヘルシンキ宣言を尊重し、文部科学省・厚生労働省の「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」並びに「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」に従います。また、治験・製造販売後臨床試験に関しては医薬品の臨床試験の実施に関する省令(GCP)を遵守します。 - その他の倫理的問題
本臨床倫理指針の原則に従い判断しますが、当事者で判断が困難な場合には倫理コンサルテーションチームで検討します。
南砺市民病院 院長